【金融のアドバイザーも千差万別】
2007年夏以降の株式投資の世界は「まさに修羅場」と感じられる方も多かったのではないでしょうか。個人投資家の信用買い残の減少ぶりを見ても、多数の方が手痛い損失をつくってしまったのがわかります。また
投資信託についても同様です。一部のジャンルを除いて大半の投資信託が大きく値下がりし、善良な生活者の多くが株式投資で失敗したのと変わらない損失を抱えてしまいました。
ここのところの筆者は、日々の仕事の中で財産を減らしてしまった方々の訴えをたくさんお聞きししました。彼らは口をそろえていいます。相談の仕方も悪かったけど相談した相手も悪かったと…。そんな中で把握できた問題点を整理しますと、次の数点にまとめられると思います。
- 自分が初心者であるがために、アドバイザーを選別するという発想が持てなかった。
- .商品説明を受けても良くわからないので言われるままにしてしまった。
- 後になってアドバイザーも自分と変わらない初心者だったと知った。
- 不安になって再度相談しても「10年待てば戻る」など誠意のない回答しか返ってこないばかりか、また別の商品を売り込まれた。
※ここで言うアドバイザーとは、一般消費者に直接接して投資運用に関して何らかの提案をする様々
な立場の方々を総称しています。
投資運用の世界はたいへん厳しい世界です。スポーツに例えるのならボクシングでしょうか。投資のアドバイスを受けるというのは、言ってみれば自分の代理人(ボクサー)にリングに上がってもらうようなものです。でもそのボクサーがボコボコに殴られた時に痛みを感じるのは、遠くからリングを見ているあなただけ。当のボクサーは全く痛みを感じないという不思議な世界なのです。
そんな事情が最初から分かっていたなら、誰にリングに上がってもらうかを真剣に検討したことでしょう。あなたの代理ボクサーが世界チャンピオンの内藤選手であれば心強いですが、もしそれが先月ボクシングを習い始めたばかりの人だったら、あなたはたった1ラウンドで入院を余儀なくなされるかもしれません。
このように
アドバイザーを選別することは非常に重要です。でも投資の初心者にとって、それは容易なことではありませんから、何らかの手掛かりが必要だと思います。
そこで、以下ではアドバイザーを見分けるためのコツをいくつか書き出してみました。それらのチェックポイントを押さえておけば、取り返しのつかない失敗をすることをある程度防ぐことができるのではないかと考えます。
【その1:アドバイザーのFP度を測る】
投資の相談をする前に、まずアドバイザーが「自分の立場になって考えてくれているか」というところを重点的に見ていきましょう。
投資運用は、充実した人生を送るための資金計画(
ライフプラン)を元に行われるべきです。将来の予定や資金計画(ライフプラン)について質問もしないですぐに商品のパンフレットを差し出したり、全財産を投資信託などリスク商品に入れたりしようと提案してくるアドバイザーはそれだけでNG。危険なのですぐにその場を立ち去りましょう。あるいは後の方のために、ひとことふたこと苦言を呈するくらいのことがあっても良いかもしれません。
もちろん「FP度を測る」といっても、FPなら良いという意味ではありません。ここで判断基準となるのは、「まず先にライフプランを把握して、相談者にとって最適な運用計画をたててくれるかどうか」というところです。
【その2:投資のキャリアを聞く】
筆者がここで問題にするのは、アドバイザーの運用スキルの優劣だけではありません。もちろんスキルが高いのに越したことはありませんが、それにも増して「アドバイザーが
投資の怖さを知っているかどうか」というところが重要だと考えます。
昨今相談に来られた方々の中には、数千万円もの財産を投資信託に投入した方も少なからずいらっしゃいました。仮にここから3割もやられてしまったとなると、家一軒分の損失です。例えばそんな経験をされた方ならば、その後の投資行動では慎重になりますし、リスク管理について研究熱心にもなります。
アドバイザーに選ぶのなら、机上の勉強や研修を受けただけでなく、投資経験もあって、できればむしろ一度は大きな損をしたことのある方のほうが良いと思います。そういう方ならお客様にもリスク管理を織り込んだ提案をしてくださるでしょうから。
【その3:運用ポリシーを聞く】
いくらライフプランを元に設計してくださっても、また投資の怖さを熟知したアドバイザーであっても、困ったことが起こる場合があります。それは投資に対する考え方が、相談者とアドバイザーで異なってしまった場合です。
例えばアドバイザーが「長期投資をポリシーとしていて、短期での残高の変動は気にしない」という感覚であったとします。このような長期投資派はむしろベテランの中にも多いですし、中には経験豊富で理論に強い方もいらっしゃいます。
しかし投資の初心者においては、
長期投資の理論(例:ポートフォリオ理論)を理解していないにもかかわらず、ポートフォリオを組みながらも残高が大きく減少してしまった時に「待っていれば大丈夫ですよ」と言われても、毎日が不安で落ち着いて生活することすらできないのです。このように 「売り手側の感覚」と「買い手側の論理」がすれ違うと、誠意を持ったアドバイスですら道半ばで腰折れて解約に至り、双方に不幸な思い出だけが残ることになります。
こういう初心者の相談者に最適だったのは、いきなり大きな財産をポートフォリオに組み込むことではなく「少しずつ投資に慣れて行ってもらう」か、あるいは「マーケットに異変があった時にすぐ
安全資産に退避できるような管理手法」を合わせて用意するべきだったのだと思います。 まず初心者の方にはこのような視点で物事を考えることは不可能ですから、この点については、アドバイスをする側が気を使って差し上げるべきことでしょう。
【相談者とアドバイザーの正しい関係とは】
去年からの修羅場とも呼べるマーケットの中にいて、または財産を減らされた大勢の方の嘆きを聞いて、この投資運用のアドバイスという仕事がいかに重責であり、人ひとりの人生を左右するものかを再認識しました。
またFPという立場からも、そのあたりをきちんと自覚しておかなければならないと感じます。FPはお金にまつわることなら何でも相談できるというイメージを持たれているようですが、実際は個々のFPには得意分野も不得意分野もあって、オールマイティのFPはむしろ少ないのです。例えば筆者は
金融FPですので不動産の有効活用などについてはほぼアドバイスができません。不動産のご相談を受けた時には知ったかぶりをしないで、専門としている仲間を紹介するようにしています。
アドバイザーとしてそれが責任ある態度だと思いますし、相談をされる立場にあっては、本当にそのアドバイザーがふさわしい方なのかどうかを、十分にチェックされてから相談するべきなのです。そのような相談者とアドバイザーの関係が当たり前になってきた時に、FPばかりか金融業界全体も正常化し、そして一般投資家も育ち、生活者も老後に希望を持てるようになっていくのだと思います。